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ソレイマニ将軍殺害は違法な侵略であると非難する国際民主法律家協会の声明

最終更新: 1月9日

STATEMENT OF THE INTERNATIONAL ASSOCIATION OF DEMOCRATIC LAWYERS CONDEMNING THE KILLING OF GENERAL SOLEIMANI AS AN ILLEGAL ACT OF AGGRESSION

ソレイマニ将軍殺害は違法な侵略であると弾劾する国際民主法律家協会の声明

 バグダッドにおける合衆国のドローン攻撃によってイランのガセム・ソレイマニ将軍を殺害したことは、アメリカ合衆国法および国際法を侵害する違法な侵略行為である。これは、アメリカ合衆国を含むすべての加盟国が従うべき法的な拘束力がある国連憲章を侵害している。国連憲章は合衆国が批准した条約であって、合衆国憲法第6条第2項によって国内法の効力をもつ。国連憲章を批准する世界のあらゆる国は、同様の義務を負う。

 政治的指導者――とりわけ合衆国の――による本件関連の論議のレベルは、衝撃的なことに、将来の世代が「戦争の惨害」の経験を味わうことがないようにするため合意した国連憲章の内容や憲章において述べられた国際的規範が支持され尊重されることを確保する自らの義務について理解の欠如を示している。

 本件殺害に関する論議は、この侵略行為の「政治的な」意味づけに焦点を当てており、この行動が違法な侵略行為に当たることを特に名指ししていなかった。さらにまた、攻撃の「合法性」に言及する場合、多くの政治的・メディアでの発言では、「脅威」の「比例性(均衡性)」および/または「急迫性」に限定されていた。このような事態はいずれも、合法性の根本問題から見て的外れである。

国連憲章違反の違法な侵略行為

 国連憲章第2条第3項は、すべての加盟国に対して、「その国際紛争を国際の平和と安全を危うくしないように平和的な手段で解決」するよう求めている。同第2条第4項は、すべての加盟国に対して、その国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土の保全または政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを要求している。

 武力の行使に対する例外は、第51条と第42条に含まれる次の2つの場合に限られる。自衛の固有の権利を認める第51条の下では、他の国の武力による攻撃に対する場合に限られる。第42条は、安全保障理事会によって承認された場合にのみ武力の行使が許される。

本件攻撃は、イラクの主権に対する侵害であり、かつ、自衛の行動ではない

 イラクにあるアメリカ軍事基地への攻撃は、イラクの非国家主体であるイラクに基地をもつ民兵によってなされたと言われているが、これは、イランによるアメリカ合衆国に対する武力による攻撃には当たらない。バグダッドにあるアメリカ大使館に立ち入ったイラク人による行動も、誰も死傷するものではなく、これらの民兵に対するアメリカの攻撃(25人を殺害し、少なくとも55人を負傷させた)に対応してなされたものであって、アメリカに対するイラクの武力による攻撃となるものではない。

 第42条は、安保理事会によって承認された場合に武力の行使を認めている。アメリカは、これら民兵の行動について懸念を表明したが、これに関する決議を求めて、この問題を安保理事会に持ち出したわけではない。

 当然、ある行動が自衛の場合に当たらないなら、それは国連憲章および国連総会決議第3314号によって禁止される侵略である。

本件暗殺は裁判外での標的殺人であり、国際法上違法である

 加えて、ソレイマニ将軍に対する攻撃は、裁判外での標的殺害であり、国際人道法または国際人権法のいかなる概念においても、違法であり、正当化されるものではない。標的殺害は、国または法の外観のもとに活動するその機関が、あらかじめ謀って、意図的にかつ故意をもって、実行者の身体的拘束を受けていない者に対して致死性の力を行使することである。致死性の力の対象とされた人が、殺害が行われた国において死刑判決が許容される犯罪について有罪判決を受けていない場合には、このような狙いをつけて殺害することもまた、いかなる法的手続きにもよらない裁判外での殺害にあたる。

 裁判外での標的殺害は、その本性からして、違法である。これは、市民的および政治的権利に関する国際規約第6条および第14条によって保障される生命への権利の恣意的な剥奪である。

 多くの評論者が比例性(均衡性)に言及しているが、これは筋違いである。かつては戦争法と呼ばれた国際人道法において比例性(均衡性)とは、特定の軍事行動が民間人の死亡、負傷または市民の物に対して付属的に損失をもたらすことが予測される場合に、それが具体的かつ直接の軍事行動との関係で行き過ぎているかどうかということに関係するものである。

 その本質上、比例性(均衡性)の原則は、合法か違法かを問わず、武力紛争の場合に適用されるものである。アメリカは、この殺害が行われたイラクとは武力紛争の状態にはなく、イランとの武力紛争のケースで行われたわけではない。

 比例性(均衡性)は、一人のイランの高位の軍人が一人のアメリカ軍の請負契約者の殺人と何らかの等価係があるかどうかというような場合を考慮するのに適用されるものではない。

 同様に、脅威の急迫性の問題は、侵略行為を自衛の行為に転換するために国際法上いかなる根拠も与えるものではない。ブッシュ政権はかつて国連の承認がないままイラクを侵略したときにこの概念を利用したが、国際社会はきっぱりとこのような考え方を排斥した。

IADLはアメリカの国際法違反を非難し、国連安保理事会に活動するよう呼びかける

IADLは、ソレイマニ将軍の暗殺並びにイラン・イスラム共和国およびその国民、指導部、文化的遺産に対するあらゆる脅迫を強く弾劾するものである。

IADLはまた、イランの文化によって深甚の重要性をもつ文化施設を含むイランにおける52か所の目標物を攻撃するというアメリカのトランプ大統領による途方もない脅迫を弾劾するものである。このような行動は、疑いもなく、侵略犯罪に該当する。

IADLは、ソレイマニ将軍に対する攻撃を国際法の視角を通して評価すること、それが違法な侵略行為であって、平和に対する犯罪であり、国連総会決議3314号における侵略犯罪としてきっぱりと弾劾することを国際社会に呼びかける。

IADLは、国連安保理事会に対して、この問題について見解を発表すること、アメリカの中東におけるあらゆる侵略や介入を終わらせて、この地域における平和と安全を維持するために必要なあらゆる措置をとることを呼びかける。

IADLは、あらゆる国連加盟国に対して、アメリカのイランその他の国に対する侵略行為や戦争犯罪を支持する、いかなる政治支援も後方支援も提供しないことを呼びかける。

2020年1月5日

IADL会長 ジーン・マイラー 次期会長予定者 エドレ・オラリア

IADL事務局長 ヤン・フェルモン 次期事務局長予定者 ミコル・サヴィア

(翻訳・文責=新倉修)

【対訳版・文責=新倉修】

STATEMENT OF THE INTERNATIONAL ASSOCIATION OF DEMOCRATIC LAWYERS CONDEMNING THE KILLING OF GENERAL SOLEIMANI AS AN ILLEGAL ACT OF AGGRESSION

ソレイマニ将軍殺害は違法な侵略であると弾劾する国際民主法律家協会の声明

The killing of Iranian General Qassem Soleimani by a United States drone strike in Baghdad is an illegal act of aggression which violates US and international law. It violates the United Nations Charter, which all members of the United Nations including the US, are legally bound to adhere to. The United Nations Charter is a treaty which was ratified by the US and, by virtue of Article VI, section 2 of the US Constitution it has the force of domestic law. All countries of the world which have ratified the United Nations Charter have similar obligations.

 バグダッドにおける合衆国のドローン攻撃によってイランのガセム・ソレイマニ将軍を殺害したことは、アメリカ合衆国法および国際法を侵害する違法な侵略行為である。これは、アメリカ合衆国を含むすべての加盟国が従うべき法的な拘束力がある国連憲章を侵害している。国連憲章は合衆国が批准した条約であって、合衆国憲法第6条第2項によって国内法の効力をもつ。国連憲章を批准する世界のあらゆる国は、同様の義務を負う。

The level of discourse on this matter by political leaders, especially in the US, shows a shocking lack of understanding of or regard for the contents of the United Nations Charter and for their obligations to ensure that the international rules stated in the Charter, which all countries agreed upon to prevent future generations from experiencing the “scourge of war,” are upheld and respected.

 政治的指導者――とりわけ合衆国の――による本件関連の論議のレベルは、衝撃的なことに、将来の世代が「戦争の惨害」の経験を味わうことがないようにするため合意した国連憲章の内容や憲章において述べられた国際的規範が支持され尊重されることを確保する自らの義務について理解の欠如を示している。

The discourse on this killing has focused on the “political” implications of this act of aggression and failed to specifically name the action as an illegal act of aggression. Furthermore, references to the “legality” of the strike have been limited in many political and media conversations to issues of “proportionality” and/or “imminence” of a “threat”. Neither of these matters addresses the fundamental issue of legality.

 本件殺害に関する論議は、この侵略行為の「政治的な」意味づけに焦点を当てており、この行動が違法な侵略行為に当たることを特に名指ししていなかった。さらにまた、攻撃の「合法性」に言及する場合、多くの政治的・メディアでの発言では、「脅威」の「比例性(均衡性)」および/または「急迫性」に限定されていた。このような事態はいずれも、合法性の根本問題から見て的外れである。

ILLEGAL ACT OF AGGRESSION IN VIOLATION OF THE UN CHARTER

国連憲章違反の違法な侵略行為

Article 2.3 of the United Nations Charter requires all member states to “settle their international disputes by peaceful means in such a manner that international peace and security, are not endangered.” Article 2.4 requires all member states to refrain in their international relations from the threat or use of force against the territorial integrity or political independence of any state, or in any other manner inconsistent with the Purposes of the United Nations.

 国連憲章第2条第3項は、すべての加盟国に対して、「その国際紛争を国際の平和と安全を危うくしないように平和的な手段で解決」するよう求めている。同第2条第4項は、すべての加盟国に対して、その国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土の保全または政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを要求している。

The only two exceptions to the use of force are contained in Article 51 and 42. Under Article 51, which recognizes the inherent right to self-defense, is operative only in response to and armed attack by another state. Article 42 permits the use of force when authorized by the Security Council.

 武力の行使に対する例外は、第51条と第42条に含まれる次の2つのものに限られる。自衛の固有の権利を認める第51条の下では、他の国の武力による攻撃に対する場合に限られる。第42条は、安全保障理事会によって承認された場合にのみ武力の行使が許される。

THE ATTACKS ARE A VIOLATION OF IRAQI SOVEREIGNTY & NOT ACTS OF SELF-DEFENSE

本件攻撃は、イラクの主権に対する侵害であり、かつ、自衛の行動ではない

The alleged attacks on a US military base in Iraq by Iraqi-based militias, which are Iraqi non-state actors do not qualify as an armed attack on the US by Iran. Neither does the action by Iraqis who entered the US Embassy in Baghdad, injuring and killing no one, in response to US strikes against these militias (which killed 25 people and injured 55 more) amount to an armed attack by Iran against the US.

 イラクにあるアメリカ軍事基地への攻撃は、イラクの非国家主体であるイラクに基地をもつ民兵によってされたと言われている。これは、イランによるアメリカ合衆国に対する武力による攻撃には当たらない。バグダッドにあるアメリカ大使館に立ち入ったイラク人による行動も、誰も死傷するものではなく、これらの民兵に対するアメリカの攻撃(25人を殺害し、少なくとも55人を負傷させた)に対応してなされたものであって、アメリカに対するイラクの武力による攻撃となるものではない。

Article 42 permits the use of force when authorized by the Security Council. The US did not bring the matter to the Security Council to seek a resolution regarding its claimed concerns about the activities of these militias.

 第42条は、安保理事会によって承認された場合に武力の行使を認めている。アメリカは、これら民兵の行動について懸念を表明したが、これに関する決議を求めて、この問題を安保理事会に持ち出したわけではない。

By definition, if an act is not in self-defense, is it an aggression which is prohibited under the UN Charter and further by UN General Assembly Resolution 3314.

 当然、ある行動が自衛の場合に当たらないなら、それは国連憲章および国連総会決議第3314号によって禁止される侵略である。

THE ASSASSINATION WAS A TARGETED EXTRAJUDICIAL KILLING, WHICH IS ILLEGAL UNDER INTERNATIONAL LAW

本件暗殺は狙いをつけて実行された裁判外での殺人であり、国際法上違法である

In addition, the attack on General Soleimani was an targeted extrajudicial killing, which is illegal and not justified under any notion of international humanitarian law or human rights law. Targeted killing is the intentional premeditated and deliberate use of lethal force by states or their agents acting under color of law, who is not in the physical custody of the perpetrator. If the person against whom lethal force is directed has not been convicted of a crime for which a death sentence is permissible in the state where the killing occurs, the targeted killing is also an extrajudicial killing outside of any legal process.

 加えて、ソレイマニ将軍に対する攻撃は、裁判外での標的殺害であり、国際人道法または国際人権法のいかなる概念においても、違法であり、正当化されるものではない。標的殺害は、国または法の外観のもとに活動するその機関が、あらかじめ謀って、意図的にかつ故意をもって、実行者の身体的拘束を受けていない者に対する致死性の力を行使することである。致死性の力の対象とされた人が、殺害が行われた国において死刑判決が許容される犯罪について有罪判決を受けていない場合には、このような標的殺害もまた、いかなる法的手続きにもよらない裁判外での殺害にあたる。

Targeted extrajudicial killing is by its very nature illegal. It is an arbitrary deprivation of the right to life guaranteed by Articles 6 and 14 of the International Covenant on Civil and Political Rights.

 裁判外での標的殺害は、その本性からして、違法である。これは、市民的および政治的権利に関する国際規約第6条および第14条によって保障される生命への権利の恣意的な剥奪である。

The reference to proportionality by many commentators is misplaced. Proportionality under international humanitarian law, otherwise known as the laws of war, relates to whether a particular military action is expected to cause incidental loss of civilian life, injury to civilians, or civilian objects which would be excessive in relation to concrete and direct military advantage.

 多くの評論者が比例性(均衡性)に言及しているが、これは筋違いである。かつては戦争法と呼ばれた国際人道法において比例性(均衡性)とは、特定の軍事行動が民間人の死亡、負傷または市民の物に対して付属的に損失をもたらすことが予測される場合に、それが具体的かつ直接の軍事行動との関係で行き過ぎているかどうかということに関係するものである。

By its very nature the principle of proportionality applies to cases of armed conflict, whether legal or illegal. The US is not in an armed conflict with Iraq where the killing occurred, nor is it in an armed conflict with Iran.

 その本質上、比例性(均衡性)の原則は、合法か違法かを問わず、武力紛争の場合に適用されるものである。アメリカは、この殺害が行われたイラクとは武力紛争の状態にはなく、イランとの武力紛争のケースで行われたわけではない。

Proportionality does not apply to considerations such as whether the killing of a high-ranking military general of Iran is in some equation with the killing of a US army contractor.

 比例性(均衡性)は、一人のイランの高位の軍人が一人のアメリカ軍の請負契約者の殺人と何らかの等価係があるかどうかというような場合を考慮するのに適用されるものではない。

Similarly the issue of imminence of a threat has no basis under international law to convert an act of aggression into an act of self-defense Although the Bush administration used the concept to invade Iraq without UN approval, the international community roundly rejects the concept.

 同様に、脅威の急迫性の問題は、侵略行為を自衛の行為に転換するために国際法上いかなる根拠も与えるものではない。ブッシュ政権はかつて国連の承認がないままイラクを侵略したときにこの概念を利用したが、国際社会はきっぱりとこのような考え方を排斥した。

IADL CONDEMNS US VIOLATIONS OF INTERNATIONAL LAW, CALLS ON UN SECURITY COUNCIL TO ACT

IADLはアメリカの国際法違反を非難し、国連安保理事会に活動するよう呼びかける

IADL strongly condemns the assassination of General Soleimani as well as all threats against the Islamic Republic of Iran, its people, its leadership and its cultural heritage.

IADLは、ソレイマニ将軍の暗殺並びにイラン・イスラム共和国およびその国民、指導部、文化的遺産に対するあらゆる脅迫を強く弾劾するものである。

IADL also condemns the outrageous threats by US President Trump to attack 52 targets in Iran, including cultural sites of deep importance to Iranian culture. Such an action would without a doubt constitute a crime of aggression.

IADLはまた、イランの文化によって深甚の重要性をもつ文化施設を含むイランにおける52か所の目標物を攻撃するというアメリカのトランプ大統領による途方もない脅迫を弾劾するものである。このような行動は、疑いもなく、侵略犯罪に該当する。

IADL calls on the international community to view the attack on General Soleimani through the prism of international law, and be roundly condemn it as an illegal act of aggression, a crime against peace, and a crime of aggression under UN General Assembly Resolution 3314.

IADLは、ソレイマニ将軍に対する攻撃を国際法の視角を通して評価すること、それが違法な侵略行為であって、平和に対する犯罪であり、国連総会決議3314号における侵略犯罪としてきっぱりと弾劾することを国際社会に呼びかける。

IADL calls on the United Nations Security Council to immediately address the issue and take all necessary measures to put an end to all US aggressions and interferences in the Middle East and to maintain peace and security in the region.

IADLは、国連安保理事会に対して、この問題について直ちに見解を発表すること、そしてアメリカの中東におけるあらゆる侵略や介入を終わらせて、この地域における平和と安全を維持するために必要なあらゆる措置をとることを呼びかける。

IADL calls on all UN member states not to provide any political or logistical support for US acts of aggression or war crimes against Iran or any other country.

IADLは、あらゆる国連加盟国に対して、アメリカのイランその他の国に対する侵略行為や戦争犯罪を支持する、いかなる政治的支援も後方支援も提供しないことを呼びかける。

5 January 2020

2020年1月5日

Jeanne Mirer Edre Olalia President, IADL Transitional President, IADL

IADL会長 ジーン・マイラー 次期会長予定者 エドレ・オラリア

Jan Fermon Micòl Savia

Secretary General, IADL Transitional Secretary General, IADL IADL事務局長 ヤン・フェルモン 次期事務局長予定者 ミコル・サヴィア